最近、知人と話していて気付いたことですが、長々と話した挙句に「それで結局何が言いたいの?」
と聞き返すと、「あれ?何を言おうとしたんだっけ!?」と本人も分からなくなってしまい、よほど言いたいほどの思いがあったらしいのですが、さんざん熱い思いを語った後、「要は、あれもこれもやろうとしても、どれも中途半端になるということ」と15分ほどの会話をあっさりしめくくりました。
私は、それだったら、「最初に結論を持ってきて、その後にその理由を話してくれたら、もっと分かり易かったのに」とふと思いました。
また、話を面白くするのであれば、全体の構成と落ちを決めていなければ、話がグタグタになるので、頭で簡単に整理してから話してもらうと、もっと聞き易かったかも知れません。
面白い話ほど興奮して感情が先に立ってしまい、文脈が前後してしまうものです。
せっかくの面白い話を分かり易く、楽しく人に伝えることができたなら、あなたの魅力も一段と上がることでしょう。
今回は、伝える力を考えてみたいと思います。
話を論理的に人に伝えるには
アメリカの高校の教科書には、話を正しく人に伝えるための前提として、次のように書いてあります。
- 自身を持って話すこと
- 適切な服装であること
- 熱意を示すこと
- 聞いている人を見ていること
- 表情や身振り、しぐさを自然にすること
- 聴衆の反応に応じて話し方を変えること
と書かれています。
さらに人を説得するための方法には、次の3つがあるとしています。
①論理的に説く方法・・・主張しようとしている件に関して、その理由を述べ、その理由を支える事実を述べる。
②聞き手の感情に訴える・・・具体例を挙げて、聞き手を感情的に動かす。例えば「彼女は、とても責任感の強い人間です」という代わりに「彼女は、引き受けた仕事を全うするため、高熱であったことを誰にも言わずに仕上げた」といった、彼女の行動を具体的に述べ、聞き手の情感を誘う方法。(ただし、度が過ぎると、プロパガンダに聞こえるので、程度に注意する)
③話し手に対する信頼感を確立する方法・・・自分が相手の信頼に足る知識を持っていることを示す。また、適切なしゃべり方、言葉使い、熱意を持って自然に話すこと。そして、誠実さが必要で、常に本心で語ることを心掛けること。
ここまで見てきて、アメリカの高校生は、「こんなことを高校生で仕込まれてるのか?」と驚きを隠せないのですが、「道理で子供のくせに雄弁なわけだ」と納得してしまう自分も、少し情けなくなってきます。
プロパガンンダの方法についても書いてあります。
これは、聞き手に考えさせずに、自分の考えを受け入れさせようとする、試みであるとしています。
①論理的に繋がっていない事柄を、繋がっているように見せる(CMでよく使われている)こと。
②他の誰もがそれをしていると述べる。
③強い否定的な感情を、聞き手に呼び起こすことを意図した言葉を使う。例えば、「〇〇〇が災いして・・・」みたいな言い方をすれば、〇〇〇があたかもよくないものという先入観、偏見を聞いている者に植え付けます。また、「現代の衆愚社会は・・・」などの決めつけた言い方は、筆者の主張を優理に展開するための言葉になるとしています。
④ごく一部の情報のみを伝え、聞き手が受ける印象を歪めさせることがある(週刊誌や政党のビラ等)
ここまで見ると、逆に日本では子供にもっと、メディアリテラシーを、なぜ教育しないのか首を傾げます。
アメリカでは、高校生は既に立派な大人として教育しているのです。
ここまでは、相手を説得するための話し方ですが、心理学の分野では、コミュニケーションの受け取り手は、最大で7つまでしか、重要なポイントを理解できないとしています。
人に何かを伝える上で、効果を高めようと思ったら、あれもこれもという発想は捨てて、絞り込むことが大事であるとしています。
欧米では、会議やプレゼンテーション、説明会などで、発表する内容を予め打ち合わせる時には、口頭でざっと説明します。
そして、言いたいことを5つから7つぐらいに絞り込み、A4一枚のそれぞれのポイントに一行づつの説明を書きます。
これをブレッドポイントと言います。
ここで肝となるのは、「要は○○である」といった簡易な表現で言い表すことです。
少し無謀なようですが、全体をざっと説明して、ポイントを簡単な表現で言い表すことができれば、自分の頭の中に、全体の点が線で繋がります。
そうすれば、相手を導くことも容易になるということです。
会話も一緒で、最初は簡単なストーリーで頭にシナリオを作り、そこから話を膨らますのです。
そうすれば、落ちのタイミングを、間違わずに入れることが出来るでしょう。
感動した場面を、のがさず説明したい気持ちも分かりますが、適切な表現のみでその場のシーンを説明した方が、かえって伝わり易い気がします。
まとめ
ネット社会の到来で、言葉を短くすることが当たり前になりました。
日本人も欧米人に似てきて、結論が最初に来ないと、我慢できなくなってきているように思います。
その分、語彙を切り捨てているのも否めません。
ですが、短い言葉に様々なシーンを想像させる力が、日本語にはあります。
俳句や短歌がそれにあたります。
最後に、伝える達人、池上 彰氏の言葉を紹介してまとめたいと思います。
「映画や連載記事にみられる”つかみ”、007の映画は、冒頭にいきなりのアクションシーンから始まる。まず、見せ場を惜しげもなく見せておいて、観客を引き付ける。その後背景である国際問題の説明をするが、これが逆だと「難しそうだ」とひかれる。雑誌の連載記事も、いきなり誤解を招くようなフレーズがタイトルであったりと、まずはひきつける。同じことを書いたり話したりするにしても、わざと反対のことを言ったり、意外な話から始めたり、時系列を逆転させたりと、相手が興味を持ってくれる話し方をすれば、あなたの言葉は聞き手の心に残るでしょう」。
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